抱っこを嫌がる・反り返るときの授乳拒否

抱っこを嫌がる・反り返るときの授乳拒否|考えられる原因と安心につながる対策

「ミルクをあげようと抱っこすると、全力で反り返って泣く」「哺乳瓶を近づけると嫌がってのけぞる」──そんな場面が続くと、「うちの子、どこか悪いの?」と不安になりますよね。

結論からお伝えすると、抱っこを嫌がる・反り返る授乳拒否の多くは、発達の流れや姿勢の問題、授乳環境の要因が重なって起きています。
一部には、胃の逆流(胃食道逆流)や身体の痛みなど医療的な評価が必要なケースもありますが、多くは工夫次第で「飲みやすい姿勢」を見つけることで改善していきます。

この記事では、

  • 抱っこを嫌がる・反り返る赤ちゃんに多いパターン
  • ミルク拒否・哺乳瓶拒否とどうつながるのか
  • 今日からできる授乳姿勢の工夫・環境調整
  • 「受診を考えた方がよいサイン」

を、医療の視点と発達の視点からわかりやすくまとめます。
「抱っこ=嫌な時間」にならないように、赤ちゃんとママ・パパの両方が少しでも楽になるヒントを一緒に整理していきましょう。


  1. 結論|抱っこを嫌がる・反り返る授乳拒否は「5つのパターン」を押さえると整理しやすい
  2. 抱っこを嫌がる・反り返る赤ちゃんに多い月齢ごとの特徴
    1. 0〜2ヶ月ごろ:泣きながらの全身反り返りが目立つ時期
    2. 3〜4ヶ月ごろ:反り返って景色を見たい時期
    3. 5〜6ヶ月以降:寝返り・ずり這い・離乳食の影響
  3. 抱っこ拒否・反り返りと「ミルク拒否」のつながり
    1. ① 姿勢が安定しないと飲みにくくなる
    2. ② 「抱っこ=苦しい・怖い」というイメージがつく
    3. ③ 胃の不快感や痛みがあると反り返りとして表れやすい
  4. チェックリスト|抱っこ嫌い・反り返りが強いときに見ておきたいポイント
    1. ① 姿勢・抱き方に関するチェック
    2. ② お腹・逆流に関するチェック
    3. ③ 感覚の敏感さ・気質に関するチェック
    4. ④ 発達による反り返りが強いケース
  5. 今日からできる!抱っこ嫌い・反り返りが強い赤ちゃんへの授乳の工夫
    1. ① 抱き方・姿勢を変えてみる
    2. ② 授乳前の「準備時間」を作る
    3. ③ 授乳のタイミングと量を見直す
    4. ④ ミルクの勢い・乳首を調整する
    5. ⑤ 授乳を中断してもOKと考える
  6. 受診を考えた方がよいサイン
  7. 【医療者コメント】医師・産婦人科病棟看護師より
  8. 育児に取り組むパパ・ママへ
  9. この記事が役に立ったら、他の記事も参考にしてみてくださいね。
    1. 🩺この記事の執筆・監修者

結論|抱っこを嫌がる・反り返る授乳拒否は「5つのパターン」を押さえると整理しやすい

抱っこを嫌がる・反り返るときの授乳拒否は、次の5つのパターンを押さえると整理しやすくなります。

パターン よくある背景 特徴
① 発達による姿勢の変化 首すわり前後、寝返り前後など 特定の向き・姿勢だけ反り返る/遊び飲みも増える
② 姿勢・抱き方が合っていない 背中が伸びすぎている・首が苦しいなど 抱っこを変えると落ち着く/角度を調整すると飲める
③ 胃の不快感・ガス・げっぷ 飲みすぎ・空気を多く飲んでいる 授乳途中で急に反り返る/泣きながら背中を反らす
④ 感覚の敏感さ・気質 触られ方や抱かれ方に敏感 服のタグ、温度、音、匂いに反応しやすい
⑤ 病気・痛みが隠れている 耳の痛み、首のこり、逆流が強いなど 常に強い反り返り/授乳以外でも激しく嫌がる

まずは、「うちの子はどのパターンが近そうか」をイメージしながら読み進めてみてください。
あわせて、ミルク拒否全般の原因を一覧で整理したい場合は、
ミルク拒否の原因一覧 も参考になります。


抱っこを嫌がる・反り返る赤ちゃんに多い月齢ごとの特徴

反り返りや抱っこ拒否は、月齢によって意味が変わることがあります。
ここでは、おおまかな目安として月齢ごとの特徴を整理します。

0〜2ヶ月ごろ:泣きながらの全身反り返りが目立つ時期

新生児〜1ヶ月では、まだ首も背中も柔らかく、泣くときに全身で反り返るような動きが出やすい時期です。
この時期は、次のような背景が考えられます。

  • お腹の張り・ガス・げっぷが溜まって苦しい
  • 抱っこの姿勢で首が少し苦しい、背中が反りやすい
  • まだ「抱かれること」に慣れていない

「新生児期からずっと飲みにくそう」という場合は、
【新生児~1ヶ月】ミルクがうまく飲めない原因 もあわせてチェックしてみてください。

3〜4ヶ月ごろ:反り返って景色を見たい時期

3〜4ヶ月になると、首がしっかりしてきて、天井や周りの景色を見たい気持ちが強くなります。
その結果、

  • 横抱きにすると体を反らせて上を見ようとする
  • 授乳よりも周りが気になってキョロキョロする
  • 抱っこで固定されるのを嫌がる

といった姿がよく見られます。
この時期の「遊び飲み・途中で泣く」様子については、
【3ヶ月】遊び飲み・途中で泣く際の対処 で詳しく解説しています。

5〜6ヶ月以降:寝返り・ずり這い・離乳食の影響

5〜6ヶ月になると、寝返り・ずり這い・離乳食のスタートなど、赤ちゃんの世界が一気に広がります。
そのため、

  • 抱っこより「自分で動きたい」気持ちが強くなる
  • ミルクより離乳食に意識が向くことがある
  • 以前より授乳回数や量が変化しやすい

といった変化が出やすく、結果的に「抱っこで飲むのを嫌がる」ように見えることも。
この時期のミルク拒否は、
【5~6ヶ月】離乳食開始後のミルク拒否と対処 も参考になります。

また、「反り返りが強くて授乳が難しい」時期については、発達の側面から
反り返りが強い時期の授乳が難しい理由
とあわせて見ていただくと理解が深まりやすくなります。


抱っこ拒否・反り返りと「ミルク拒否」のつながり

では、なぜ抱っこを嫌がる・反り返ることが、そのままミルク拒否や哺乳瓶拒否につながるのでしょうか。
ポイントは次の3つです。

  1. 姿勢が安定しないと、飲み込みと呼吸のバランスがとりにくい
  2. 「抱っこ=苦しい・不快」という学習が起こる
  3. 痛みや不快感があると、授乳の場で一気に噴き出す

① 姿勢が安定しないと飲みにくくなる

ミルクを飲むとき、赤ちゃんの体は

  • 頭と首がまっすぐ支えられている
  • 背中が自然なカーブで丸くなっている
  • 胸とお腹がぎゅっと折れすぎていない

という状態が理想です。
しかし、反り返ってしまう赤ちゃんは、

  • 首だけそって気道が狭くなり、むせやすい
  • 背中がピンと伸びて、哺乳瓶の角度が合わない
  • 体がねじれた状態で飲むことになり、疲れやすい

といった状態になりやすく、「飲みにくい → 嫌になる → ますます反る」という悪循環が起きてしまうことがあります。

② 「抱っこ=苦しい・怖い」というイメージがつく

過去に、

  • むせて苦しい思いをした
  • お腹が苦しい状態で無理に飲ませられた
  • 泣いているのに授乳を続けられた

といった経験が続くと、赤ちゃんの中で「抱っこされる=苦しいことが始まる」というイメージがついてしまうことがあります。
その結果、哺乳瓶を見せただけで体を反らせて全力で拒否する、という姿につながることもあります。

こうした「学習されたミルク拒否」は、
ミルク拒否ガイド【保存版】 の中でも重要なテーマのひとつです。

③ 胃の不快感や痛みがあると反り返りとして表れやすい

赤ちゃんは「ここが痛い」と言葉で伝えられないため、全身を反らせる動きで不快感を表現することがあります。
特に多いのは、

  • 胃食道逆流(ミルクが食道側に戻る)
  • げっぷが出きらずお腹が張っている
  • 便秘気味でお腹に圧がかかっている

といった場合です。
授乳後に背中をのけぞらせながら泣く様子が続くときは、単なる抱っこ嫌いというよりも、不快感が強いサインかもしれません。


チェックリスト|抱っこ嫌い・反り返りが強いときに見ておきたいポイント

ここからは、ご家庭で確認しやすいチェックポイントをまとめます。
すべて当てはまる必要はありませんが、「どのタイプが近いか」の目安になります。

① 姿勢・抱き方に関するチェック

  • 同じ向きで抱くと必ず反り返る(左右差がある)
  • 縦抱きにすると少し落ち着く/逆に横抱きだと反り返る
  • 授乳クッションがなく、ママ・パパの腕だけで支えていて腕がプルプルする
  • 授乳中、赤ちゃんの頭が大きく後ろに反っている

こうした場合は、まず抱き方・角度を見直すことが重要です。
詳しい姿勢の工夫は、
飲みやすくなる抱き方・角度
飲ませ方のコツと姿勢調整 も参考にしてください。

② お腹・逆流に関するチェック

  • 授乳後すぐに反り返りながら泣くことが多い
  • げっぷが出にくい・時間がかかる
  • ミルクを飲んだあと、しばらくしてから「うっ」と顔をしかめて反る
  • 吐き戻しが多い、あるいは噴水のように吐く

これらが目立つときは、ミルクの量・ペース・乳首のサイズ・姿勢を一度見直す価値があります。
吐き戻しが多い赤ちゃん向けのミルクについては
吐き戻しが多い赤ちゃん向けのミルクの比較 も参考になります。

③ 感覚の敏感さ・気質に関するチェック

  • 服のタグや素材に敏感で、着替えでよく嫌がる
  • 抱っこされる人・姿勢によって反応が違う
  • 音・光・匂いなど周りの刺激に反応しやすい
  • 授乳中に少しの物音でもすぐ顔を上げてしまう

このような赤ちゃんは、静かで暗めの部屋・同じルーティン・同じ抱き方を続けることで、少しずつ安心して飲めるようになることが多いです。
授乳前に落ち着く時間を作るコツは、
ミルク前のルーティン作り も参考になります。

④ 発達による反り返りが強いケース

  • 寝返りやずり這いが始まる前後で反り返りが増えた
  • 授乳よりも「動きたい」「周りを見たい」様子が強い
  • 元気でよく笑うが、授乳だけ反り返って嫌がる

このような場合は、「発達の一時的なゆらぎとしての授乳拒否」であることも多いです。
発達と授乳の関係については、
寝返り・ずり這いが始まると授乳が乱れる理由
なども参考になるでしょう。


今日からできる!抱っこ嫌い・反り返りが強い赤ちゃんへの授乳の工夫

ここからは、具体的な対策をお伝えします。
すべてを一度にやる必要はありません。気になるものから1つずつ試してみてくださいね。

① 抱き方・姿勢を変えてみる

反り返りが強い赤ちゃんほど、「背中がまあるくなりやすい姿勢」を意識すると飲みやすくなることがあります。

  • やや縦抱きにして、頭を高めにする
    → 胃の逆流が気になる時にもおすすめ
  • 赤ちゃんの体がママ・パパの胸にしっかり密着するように抱く
    → 隙間が大きいと反り返りやすい
  • 授乳クッションや枕で「腕だけで支えない」工夫
    → 大人の腕が疲れると赤ちゃんの姿勢も不安定に

抱き方のバリエーションは
飲みやすくなる抱き方・角度
飲ませ方のコツと姿勢調整 に詳しくまとめています。

② 授乳前の「準備時間」を作る

抱っこした瞬間に反り返る子は、すでに緊張モードに入っていることが多いです。
10〜30秒ほどでよいので、次のような「準備時間」をとってみてください。

  • まずは数十秒ほど、ミルクは見せずに抱っこだけする
  • ゆっくり背中をトントンしながら声をかける
  • 深呼吸するように、ママ・パパ自身も力を抜く

大人が緊張していると、腕や肩に力が入り、そのまま赤ちゃんにも伝わってしまいます。
「飲ませる前に、まず一緒に落ち着く」という意識が大切です。

③ 授乳のタイミングと量を見直す

抱っこを嫌がる=ミルクそのものが嫌い、とは限りません。
「今はお腹がそこまで空いていない」ということもよくあります。

  • 授乳間隔が短すぎないか(1〜1.5時間以内など)
  • 前の回で飲ませすぎていないか
  • 離乳食後すぐに授乳していないか(5〜6ヶ月以降)

こうした点を見直すと、「お腹がほどよく空いたタイミング」での授乳になり、抱っこ拒否が軽くなることがあります。
量の目安や全体のバランスは、
月齢別ミルク量の目安まとめ も参考にしてみてください。

④ ミルクの勢い・乳首を調整する

反り返りながら嫌がる子の中には、「勢いよく出すぎて苦しい」ケースもあります。
一度、次の点を見直してみてください。

  • 月齢に対して乳首サイズが大きすぎないか
  • 哺乳瓶を強く傾けすぎていないか
  • 飲み始めから一気に流れていないか

乳首サイズや流量の調整については、
月齢別乳首(ニプル)サイズの選び方
哺乳瓶の穴の形・硬さ・流量で変わる飲みやすさ も参考になります。

⑤ 授乳を中断してもOKと考える

反り返りが激しくなったら、いったん授乳を中断して落ち着かせるのも大切な対応です。

  • 一度哺乳瓶を離し、抱っこだけに切り替える
  • 部屋を変えたり、立ってゆらゆらしてみる
  • 数分休んでから、再度落ち着いたところでトライする

「ここで飲ませないと!」と焦るほど、赤ちゃんも緊張してしまいます。
飲めるときに、飲める量だけで大丈夫という気持ちで、少し肩の力を抜いてみてくださいね。


受診を考えた方がよいサイン

抱っこを嫌がる・反り返る授乳拒否の多くは家庭での工夫で改善していきますが、次のような場合は、小児科などに相談することをおすすめします。

  • 授乳のたびに激しく反り返り、ほとんど飲めない状態が続く
  • 体重増加が明らかに少ない、または減っていると言われた
  • 噴水のような嘔吐が繰り返される
  • 発熱、ぐったりしている、顔色が悪い(青白い・土色など)
  • 授乳以外の場面でも、常に全身を強く反り返して泣き続ける
  • 体の片側だけ極端に硬い・いつも同じ向きにしか向かない

「様子を見ていていいのか」「どこまでがよくある反り返りなのか」は、家庭だけで判断するのがとても難しい部分です。
少しでも不安が強いときは、早めに医療機関で相談してみると安心につながります。


【医療者コメント】医師・産婦人科病棟看護師より

抱っこを嫌がる・反り返る授乳拒否は、現場でも非常によく相談されるテーマです。産婦人科病棟でも、小児科外来でも、「授乳のたびに反り返って泣く」「抱っこすると全力でのけぞる」というお話は珍しくありません。多くの場合、発達のタイミングと姿勢の問題、授乳の記憶(むせて苦しかった経験など)が重なっていることが多く、抱き方や授乳のタイミングを整えることで、少しずつ落ち着いていくケースがほとんどです。

一方で、体重が増えない・嘔吐が多い・ぐったりしているなど、明らかな変化がある場合は、病気が背景にある可能性も否定できません。「少し気になる」段階で相談していただくことで、必要な検査や対応につながりやすくなります。

授乳は、「ただミルクを飲ませる時間」ではなく、赤ちゃんと親が安心を分かち合う大切な時間です。
完璧を目指す必要はありません。一つずつ「やりやすい形」に近づけていければ、それで十分です。


育児に取り組むパパ・ママへ

抱っこを嫌がられたり、全力で反り返られると、「自分の抱き方が悪いのかな」と責めてしまいがちです。でも、赤ちゃんはまだ「うまく言葉にできない気持ち」を全身で表現しているだけで、ママ・パパを嫌っているわけではありません🌼

今日できることを一つだけ試すだけでも立派なケアです。どうか、ご自身のがんばりも認めてあげながら、少しずつ「うちの子に合うスタイル」を一緒に探してみてくださいね。


この記事が役に立ったら、他の記事も参考にしてみてくださいね。

ミルク拒否の全体像や、月齢別の対策をまとめて確認したい方は、こちらもどうぞ。
👉 目次:ミルク拒否ガイド【保存版】|原因・対策・哺乳瓶選び・月齢別サポートまとめ

🩺この記事の執筆・監修者

📌 執筆者:
元産婦人科病棟看護師/第一子育児中の母

           

📌 医療監修:
医師/乳幼児・児童発達分野にて勤務経験あり/第一子育児中の父

※個別の診断・治療を提供するものではありません。必要に応じて医療機関へご相談ください。

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