寝ながら・抱っこしながらの授乳テク
赤ちゃんが起きていると飲まない、抱っこや寝かせると飲む、いわゆる「寝ながら飲み」「抱っこ飲み」はとても多くの家庭で見られる授乳スタイルです。結論として、姿勢の工夫と安全性を意識すれば、寝ながら・抱っこしながらの授乳は赤ちゃんにとって自然な飲み方で、ミルク拒否や哺乳瓶拒否の改善にもつながります。
この記事では、寝ながら飲む赤ちゃんの特徴、安全に行う方法、ミルク拒否との関係、月齢別の注意点などをわかりやすくまとめています。途中で泣いたり、飲むのを嫌がる場合の原因には 飲み始めは飲むのに途中で泣く理由 も関係するため、併せて参考にしてください。
最初に知っておきたいこと
寝ながら・抱っこしながら飲むのは「悪いクセ」ではありません。
赤ちゃんは姿勢によって飲みやすさが大きく変わります。大人が椅子に座ってペットボトルを飲むのと、ベッドに横になってストローで飲むのでは感覚が違うように、赤ちゃんにも「楽な姿勢」があります。
特に次のタイプは、寝ながらのほうが飲みやすいことがあります。
- 哺乳瓶を上手くくわえられない
- 空気を飲み込みやすい
- 飲む量が日によってムラがある
- 授乳環境の影響を受けやすい(音・匂い・光)
こうした特徴は 哺乳瓶だけ嫌がる赤ちゃんの特徴 と重なることも多く、姿勢が変わるだけで飲む量が安定するケースが多いです。
寝ながら授乳のメリット
「寝かせると飲む」「縦抱っこだと飲まない」という悩みは非常に多く、理由は大きく3つに分けられます。
① 胃と食道がまっすぐになり、飲みやすい
寝かせた姿勢では口→喉→食道→胃の流れがスムーズになり、哺乳瓶の角度も調整しやすくなります。
② 赤ちゃんがリラックスしやすい
抱っこや添い寝の状態では、赤ちゃんの緊張がとけやすく、呼吸も落ち着きます。
特に途中で泣いて飲めなくなる子には有効なことがあります。
③ ミルク拒否の改善につながる
「姿勢が合わない」タイプのミルク拒否は、寝かせるだけで改善することがあります。
→ 授乳環境(匂い・姿勢・温度)の影響
寝ながら授乳するときの安全ポイント
寝ながら飲むほうが飲みやすい子は多いものの、必ず意識したい安全ポイントがあります。以下の項目は必ず守ってください。
✔ ① 完全に平らに寝かせない
完全に仰向けにすると、むせやすく、逆流しやすくなります。
15〜30度の角度(授乳クッションやタオルの傾斜)が理想です。
✔ ② 哺乳瓶の角度を一定に保つ
ミルクが勢いよく出すぎるとむせてしまいます。哺乳瓶は「乳首が常にミルクで満たされる角度」を意識しましょう。
✔ ③ 飲み終わったら体勢を整える
飲み終わりは赤ちゃんが深く眠りに入りやすいタイミングですが、完全に水平になると吐き戻しやすいため、少し頭を高くします。
✔ ④ 寝かしつけと授乳を分けられると理想
寝ながら飲むと寝落ちしやすくなりますが、「寝かしつけの道具」になると離乳後に睡眠トラブルを起こしやすいことがあります。
もちろん月齢が低いうちは問題ありません。
抱っこしながら授乳するメリットとコツ
抱っこ授乳はミルク拒否の改善にもよく使われるテクニックです。
① 赤ちゃんが安心しやすい
ママ・パパの体温や心拍に触れることで落ち着きやすく、飲みムラのある子にも合いやすい方法です。
② げっぷが出やすい姿勢を保てる
抱っこ姿勢は自然と背中が伸びやすく、空気が抜けやすくなります。
空気を飲み込みやすい赤ちゃんには、抱っこ授乳→すぐ縦抱きでげっぷの流れが効果的です。
③ 哺乳瓶の角度調整がしやすい
飲むスピードや量が安定しやすく、途中で泣きにくくなることも。
飲ませ方全般については
→ 飲みやすくなる抱き方・角度
も参考になります。
【比較表】寝ながら授乳 vs 抱っこ授乳
| 項目 | 寝ながら授乳 | 抱っこ授乳 |
|---|---|---|
| 飲みやすさ | ◎ リラックスしやすい | ○ 哺乳瓶の角度調整がしやすい |
| 安全性 | △ 角度調整が必要 | ◎ むせにくく安心 |
| ミルク拒否対策 | ◎ 哺乳瓶拒否の子に効果的 | ◎ 姿勢が安定し泣きにくい |
| 保護者の負担 | ○ 夜間授乳で便利 | △ 体を支える負担が大きめ |
月齢別|寝ながら・抱っこしながら授乳のポイント
【0〜1ヶ月】姿勢がすべてと言ってもよい時期
新生児は頭が重く、空気を飲み込みやすい時期です。
→ 【新生児〜1ヶ月】ミルクがうまく飲めない原因
寝かせ気味の姿勢のほうが安定しやすいですが、むせやすいので角度調整が重要です。
【2ヶ月】飲みムラが始まり、抱っこの方が飲む子も多い
2ヶ月は飲む量が日によって変わりやすく、「寝かせると飲む/抱っこだと飲む」の差も大きい時期です。
→ 【2ヶ月】急にミルクを飲まなくなる原因
【3〜4ヶ月】姿勢のクセが強く出る時期
抱っこ姿勢に慣れすぎると寝ながら飲みにくくなることがあります。途中で泣く場合は、乳首サイズや環境刺激も確認しましょう。
→ 授乳環境(匂い・姿勢・温度)
【5〜6ヶ月】離乳食開始で飲み方が変わる
寝かせ飲みが減り、抱っこのほうが落ち着く時期。飲む量のムラも出やすくなります。
→ 【5〜6ヶ月】離乳食開始後のミルク拒否
寝ながら・抱っこしながら授乳するときのよくあるトラブルと対処法
寝ながら・抱っこしながら授乳は飲みやすい反面、特有のトラブルが起こることがあります。それぞれ原因と対策をまとめました。
① むせる・咳き込む
寝かせた姿勢ではミルクが勢いよく流れ込みやすく、むせやすくなります。特に乳首が大きすぎる(流速が速い)場合に起こりがちです。
対処
- 傾斜をつけて頭を高くする
- 乳首サイズを見直す(流量を落とす)
- 哺乳瓶を寝かせすぎない
乳首サイズの見直しは
→ 月齢別乳首サイズの選び方
が参考になります。
② 飲みながら寝落ちして量が足りない
寝ながらの授乳は安心しやすい半面、途中で寝てしまい飲む量が不足しやすいことがあります。
対処
- 最初は抱っこで飲ませて、後半だけ寝かせる方法を試す
- 途中で一度げっぷを挟む
- ミルクの温度をやや高めにすると飲みやすくなることも
→ ミルクの温度調整テクニック
③ 寝ながらでしか飲まなくなる
「寝かせれば飲むけど、起きていると飲まない」という相談はとても多く、ミルク拒否の典型的パターンのひとつです。
原因として多いもの
- 哺乳瓶の角度や乳首が合っていない
- 姿勢のクセで飲みにくい
- 空腹ではないタイミングで授乳している
→ 空腹じゃないときの見分け方 - 環境刺激(光・匂い・音)に敏感
寝かせないと飲まない時期は“姿勢差による飲みやすさの違い”が原因であることが多いため、まずは起きている姿勢の調整から始めると改善しやすくなります。
④ 抱っこではよく飲むが、寝かせると泣く
抱っこは体幹が安定しやすく、赤ちゃんが安心しやすい姿勢の代表です。寝かせると泣く場合は「不安」「飲み込みづらさ」の両方が考えられます。
対処
- 抱っこ授乳 → 半分飲んだら寝かせて続き、の二段階方式
- スワドル(おくるみ)で体を安定させる
- 哺乳瓶の角度を一定に保つ
⑤ 最後に吐き戻す・くるしそうにする
寝ながら授乳では、ミルクが逆流しやすいため吐き戻しが増えることがあります。
対処
- 飲み終わりに頭を少し高くして休ませる
- 少量ずつ飲ませて休憩を挟む
- 乳首の流量を落とす
【チェックリスト】寝ながら・抱っこしながら飲む赤ちゃんの特徴
以下に多く当てはまるほど、「姿勢の工夫」で飲みやすくなるタイプです。
- 起きていると哺乳瓶を嫌がることがある
- 寝かせると飲む量が増える
- 途中で泣いて飲めなくなることが多い
- 光・音・匂いに敏感
- お腹にガスが溜まりやすい
- 授乳姿勢が安定しづらい
- 首や体幹がまだ不安定(月齢3ヶ月頃までに多い)
安全性を高めるためのポイント(重要)
寝ながら飲むときは、以下のポイントを必ず守ることで安全性が大きく高まります。
① ミルクが勢いよく流れない角度に調整
寝かせすぎると乳首の先が完全にミルクで満たされ、流れが速くなりむせやすくなります。
② 哺乳瓶を赤ちゃんの口の高さに合わせる
上から差し込むようにすると喉が閉じやすくなり、飲みにくくなります。
③ 寝かしつけ目的の授乳は長期的に控えめに
月齢が低いうちは問題ありませんが、6ヶ月以降“ミルク=寝かしつけ”になり習慣化すると、夜泣きの原因になることがあります。
寝ながら授乳とミルク拒否の関係
寝ながら飲む子のなかには、起きていると飲まない「軽度のミルク拒否」状態になっているケースがあります。
よくある背景
- 哺乳瓶の角度が合っていない
- 乳首が早すぎる(ミルクの勢いが強すぎる)
- 飲み始めがむずかしく途中で泣く
→ 途中で泣く理由 - 姿勢が不安定で飲み込みにくい
寝ながら飲むと改善する場合は「姿勢の問題」であることが多く、抱っこ授乳と組み合わせることでスムーズな飲み方が身につきやすくなります。
受診を検討するべきケース
寝ながら・抱っこしながら飲めていても、以下の症状がある場合は医療機関に相談しましょう。
- 飲むたびに大量に吐く
- むせる、咳き込むことが頻繁
- 体重があまり増えない
- 機嫌が悪く、授乳のたびに泣き続ける
- 呼吸が苦しそうに見える
関連ページ:
体重が増えない時のチェックポイント
/ ミルク拒否で受診すべき症状
まとめ
寝ながら・抱っこしながらの授乳は、赤ちゃんにとって自然で飲みやすい方法のひとつです。
姿勢が変わるだけで驚くほど飲みやすくなり、ミルク拒否や哺乳瓶拒否の改善につながることも多くあります。安全に気をつけながら、赤ちゃんの飲みやすい姿勢を探してみてくださいね。
もっと詳しく授乳全体を見直したい場合は
→ ミルク拒否ガイド【保存版】
もおすすめです。
【医療者コメント】医師・産婦人科病棟看護師より
■産婦人科病棟での経験から
寝ながら飲む赤ちゃんは多く、決して珍しいことではありません。姿勢が合うだけで自然に飲めるようになるケースがほとんどで、無理に修正しすぎる必要はありません。「この子はこういう飲み方が得意なんだ」と捉えて大丈夫です。寝ながら授乳は角度が適切であれば安全に行えます。ただし、むせ込みや逆流が強い場合は乳首サイズの見直しや授乳姿勢の調整が必要です。体重の増え方や機嫌を見ながら、負担の少ない方法を選んでいきましょう。
💬 ミルク拒否に悩むパパ・ママへ
授乳の姿勢は赤ちゃんによって本当に個性があります。うまくいく日も、難しい日もありますが、少しずつ「この姿勢なら飲める」が見つかるので大丈夫。あなたのペースで進めていけば必ず慣れてきますよ。
この記事が役に立ったら、他の記事も参考にしてみてくださいね。
→ 目次:ミルク拒否ガイド【保存版】
🩺この記事の執筆・監修者
📌 執筆者:
元産婦人科病棟看護師/第一子育児中の母
📌 医療監修:
医師/乳幼児・児童発達分野にて勤務経験あり/第一子育児中の父
※個別の診断・治療を提供するものではありません。必要に応じて医療機関へご相談ください。


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